緑内障の治療といえば目薬を思い浮かべる人が多いが、近年はレーザーを使った治療や、白内障手術と組み合わせる新しい選択肢も注目されている。目薬だけでは眼圧が下がりきらない場合や、点眼の負担を減らしたい場合に、レーザー治療や低侵襲な手術がどのように役立つのか気になっている人も多いのではないだろうか。この記事では緑内障のレーザー治療の仕組みから費用の目安、似たような選択肢との違いまでを整理して解説する。
緑内障のレーザー治療はどんな仕組みで眼圧を下げるのか
緑内障は眼球内の水分である房水の排出がうまくいかず、眼圧が上昇して視神経が徐々に傷んでいく病気だ。進行すると視野が欠けていくが、多くの場合は自覚しにくく、健康診断で指摘されて初めて気づく人も少なくない。レーザー治療はこの房水の排出経路に働きかけ、目薬に頼らずとも眼圧を下げる効果を狙う治療法として用いられている。
代表的なものに選択的レーザー線維柱帯形成術という方法があり、一般にSLTと呼ばれている。これは房水の出口にあたる線維柱帯という組織にレーザーを照射し、房水が流れやすくなるよう促す治療だ。従来のレーザー治療に比べて周辺組織へのダメージが少なく、繰り返し治療できる点が特徴とされている。
緑内障のSLTにかかる費用の目安と保険適用の考え方
緑内障のSLTは多くの医療機関で保険診療として扱われており、自己負担割合に応じて数万円程度に収まるケースが一般的とされる。ただし施術する目の本数や医療機関の設備、診察料や検査料の有無によって総額は変わってくるため、事前に医療機関へ確認しておくことが望ましい。
費用を検討する際は、施術そのものの料金だけでなく、術後の経過観察にかかる通院費用も含めて考える必要がある。SLTは一度の施術で効果が永続するわけではなく、数年単位で効果が薄れてくることがあり、必要に応じて再度の照射が検討される場合もある。長期的な視点で眼科医と相談しながら治療計画を立てることが大切だ。
iStentという新しい手術の費用と特徴
緑内障治療の選択肢として、iStentと呼ばれる極小のインプラントを用いた手術も知られるようになってきた。これは低侵襲緑内障手術と呼ばれるジャンルに属する治療で、非常に小さな医療機器を目の中に留置し、房水の排出を助ける仕組みになっている。傷口が小さく回復も比較的早いとされ、負担の少ない手術を望む患者にとって選択肢の一つとなっている。
iStent手術の費用も基本的には保険診療の対象となっているが、単独で行われることは少なく、多くは白内障手術と同時に行われる点が特徴だ。手術費用は白内障手術の費用に上乗せされる形になるため、総額は医療機関や入院の有無によって差が出やすい。高額療養費制度の対象になる場合もあるため、負担が気になる場合は加入している健康保険の窓口に確認してみるとよいだろう。
iStentと白内障の同時手術が選ばれる理由
iStentは白内障手術と同時に行われることが前提とされている手術だ。これは白内障手術で濁った水晶体を取り除く際に生じるわずかなスペースを利用して機器を留置するためで、単独での手術に比べて眼への負担を抑えられるという考え方に基づいている。
白内障は加齢とともに多くの人に見られる目の変化であり、緑内障の治療を検討している年代と重なることも多い。そのため、白内障の症状がある程度進んでいる患者であれば、視力の回復と眼圧のコントロールを同時に目指せる点がメリットとして語られている。ただし、すべての緑内障患者に適応があるわけではなく、緑内障の病期や目の状態によって手術の可否は変わってくるため、担当医との相談が欠かせない。
SLTとiStentはどっちを選ぶべきか
SLTとiStentのどちらが向いているかは、緑内障の進行度や白内障の有無、目薬による治療の効果など複数の要素で判断される。一概にどちらが優れているというものではなく、それぞれ役割が異なる治療だと理解しておくとよい。
SLTは白内障の有無にかかわらず単独で受けられる治療で、点眼薬の本数を減らしたい、あるいは点眼の効果が不十分な段階で選択されることが多い。繰り返し照射できる点も特徴の一つとされる。一方でiStentは白内障手術とセットで行われることが前提となるため、白内障の症状がまだない、あるいは軽度な人にとっては選びにくい面がある。眼圧の程度や視野障害の進行状況、生活スタイルなども踏まえて、眼科医が総合的に判断していく治療といえる。
緑内障の日常生活でしてはいけないことへの誤解
緑内障と診断されると、うつむく姿勢や重い荷物を持つことを極端に避けようとする人がいるが、日常的な範囲の動作であれば過度に恐れる必要はないとされている。むしろ大切なのは、自己判断で点眼を中断したり通院の間隔を勝手に空けたりしないことだ。
緑内障で注意が必要とされる代表的な行為には、長時間うつむき続ける作業を連続して行うこと、暗い場所で長時間にわたりスマートフォンなどの画面を見続けること、医師の指示なく複数の目薬を自己流で使い分けることなどが挙げられる。また、緑内障の種類によっては特定の市販薬や風邪薬に含まれる成分が眼圧に影響することがあるため、他の病気で薬を処方される際には緑内障であることを必ず伝える必要がある。不安な生活習慣がある場合は、自己判断せず担当医に確認する姿勢が何よりの予防につながる。
信頼できる眼科医をどう見極めるか
緑内従の治療は長期にわたることが多いため、テレビや雑誌で紹介されるようないわゆる名医やスーパードクターという肩書きだけで医療機関を選ぶのは必ずしも得策とはいえない。手術の技術力はもちろん大切だが、それ以上に日々の診察でしっかりと眼圧や視野の変化を追い、患者の生活状況に合わせて治療方針を調整してくれるかどうかが重要になる。
信頼できる眼科医を見極めるポイントとしては、検査データを丁寧に説明してくれるか、治療の選択肢についてメリットとデメリットの両方を伝えてくれるか、疑問点に対して納得のいくまで答えてくれるかといった姿勢が挙げられる。緑内障専門外来を設けている医療機関や、日本眼科学会専門医の資格を持つ医師が在籍しているかどうかも、選ぶ際の一つの目安になるだろう。
目薬による副作用とまつ毛が伸びる目薬の関係
緑内障の治療で広く使われている点眼薬の中には、まつ毛が伸びる、まつ毛が濃くなるといった作用が報告されている成分を含むものがある。これはプロスタグランジン関連薬と呼ばれる眼圧下降薬に見られる副次的な作用で、治療目的で使われている薬剤の副作用の一つとして知られているものだ。
この作用を利用した美容目的の医薬品も存在するが、緑内障治療で処方される点眼薬はあくまで眼圧を下げることが主目的であり、まつ毛の変化は副次的なものにすぎない。まぶたの色素沈着や目の周りのくぼみといった変化が起きることもあるため、見た目の変化が気になる場合は自己判断で使用をやめず、担当医に相談することが望ましい。
治療を続けるうえで押さえておきたいこと
緑内障は一度失われた視野を元に戻す治療法が確立されていない病気であり、レーザー治療や手術はあくまで進行を抑えるための手段という位置づけになる。SLTやiStentといった選択肢が増えたことで、患者ごとの生活スタイルや目の状態に合わせた治療計画を立てやすくなっているのは確かだが、どの治療が適しているかは自己判断できるものではない。
定期的な眼科検診で眼圧や視野の変化を継続的に把握し、担当医とよく相談しながら治療方針を決めていくことが、長期にわたって視力を守るための基本になる。気になる症状や治療の選択肢については、かかりつけの眼科医に率直に質問してみることをおすすめする。